北海道の中学校では通知表の成績で、受けられる高校が決まると聞いたんだけど。
え、どういうことなの?
移住して驚いたことの一つが、北海道の高校受験制度です。中学校3年間の通知表の成績が内申点として換算されて、入学試験当日の成績に反映されます。
そこで本記事では、北海道立高校の受験制度を理解したい人向けに、高校受験で合否を決める学習点・内申ランク(個人調査書)と学力点(入学試験の学力検査)について解説したいと思います。
学習点(内申ランク)とは
学習点の計算方法
9教科(国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭、外国語)の通知表の評定から計算されます。内申点といった方が理解しやすいでしょうか。
次の計算式で求めます。
北海道の場合は
- 1年生の通知表の成績から3年分が換算されること
- 副教科も主要5教科と同じ配点になること
が大きな特徴です。
3年生の成績は3倍になるので比重は大きいですが、1、2年の時の成績が6割近くを占めるので、3年生になってから学習点を大きく向上することは難しいです。
中学入学したばかりの時は、多くの生徒にとって高校受験の実感は乏しいと思います。その状況の中で、勉強するかしないかで、差が出やすい時期とも言えます。
1年生の時から、定期テストはもちろんのこと、提出物や授業への積極的姿勢といった評価一つ一つをコツコツと乗り越えることで、学習点はある程度確保できるとも言えるわけです。
5段階評価のため、3年間の学習点の最高点は、
5×9教科×(2+2+3)=315点 となります。
内申ランクとは
学習点を基に20点ごとに区切って、A〜Mの13段階に分けて表記します。
内申ランクごとに、合格可能性の高い高校がどこのあたりのなるのか目安にすることができます。
1年生の時に、自分のランクを見るときは、
1年生の学年末通知表の合計×7 をして目安とします。
学習点 | 備考 | |
Aランク | 315〜296 | 4が各学年で2つ以内くらいが目安。 |
Bランク | 295〜276 | |
Cランク | 275〜256 | |
Dランク | 255〜236 | オール4(252点)はここ |
Eランク | 235〜216 | |
Fランク | 215〜196 | |
Gランク | 195〜176 | オール3(189点)はここ |
Hランク | 175〜156 | |
Iランク | 155〜136 | |
Jランク | 135〜116 | オール2(126点)はここ |
Kランク | 115〜96 | |
Lランク | 95〜76 | |
Mランク | 75以下 |
1、2年生の時にオール4だった生徒が頑張って3年生でオール5になったとしても、学習点は279点、ぎりぎりBランクとなってしまいます。
学力点とは
学力点は、入学試験当日に行われる学力検査の成績です。
5教科×100点=500点満点です。
2022年度受験から、北海道の公立高校は全て同一の問題に統一されました。
2022年度受験より前は、60点×5教科=300点満点でした。
学習点は315点が最高点なので、なんと当日の入学試験よりも通知表の配点割合が高かったことになります。
一般入試の選抜方法
選抜方法の基本
- 募集人員の 70%程度:学習点と学力点を同等に取扱い選抜を行う。
- 募集人員の 15%程度:個人調査書の内容(学習点他)を重視して選抜を行う。
- 募集人員の 15%程度:学力検査(学力点)を重視して選抜を行う。
- 選抜方法1を最初に行う。選抜にあたっては、学習点、学力点ともに20点ごとに区切った相関表(下図)を用いる。
- 次に選抜方法2、3を行うが、選抜の順番については高校の学校長が判断する。その際は、学力点×0.63を行い、学力点を315点満点に換算して選抜する。学習点と学力点の比率は学校ごとに定める。
選抜方法1が主な合格者枠になるので、結局のところ学習点も学力点も両方の成績をバランスよくとることが求められているということになります。
学校裁量で定められる項目
傾斜配点
学力検査においては、高校ごとに特定の教科の配点に比重をかける傾斜配点を行うことができます。1~3教科内で、1.5~2倍の配点をつけることができると定められています。
傾斜配点を行った場合には、総得点を500点に換算して相関表に当てはめます。
札幌市内にある公立高校のTOP校と言われる北海道札幌南、北、西、東高等学校で見てみると…
札幌北高校のみ傾斜配点を導入ー数学・英語 2.0倍
(北海道教育委員会 令和6年度学校裁量についての実施要領一覧より)
学力点:学習点の比率
選抜方法2、3のいずれの場合においても、学力点と学習点の比率は、高校ごとに事前に定めることができます。
また、個人調査票を重視する選抜方法2の場合には、参考とする項目(特別活動の記録、総合所見等、実技等)についても学校ごとに指定しておくことが可能です。
北海道札幌南、北、西、東高等学校で見てみると…
【選抜方法2ー個人調査票(学習点)を重視する場合の比率・参考項目】
学力点:学習点 | 特別活動の記録 | 総合所見 | 実技等 | |
札幌南高校 | 4:6 | ○ | ○ | |
札幌北高校 | 4:6 | |||
札幌西高校 | 4:6 | ○ | ○ | |
札幌東高校 | 4:6 |
【選抜方法3ー学力点を重視する場合の比率】
学力点:学習点 | |
札幌南高校 | 10:0 |
札幌北高校 | 9:1 |
札幌西高校 | 10:0 |
札幌東高校 | 8:2 |
進学校では、どちらの選抜方法においても学力点の比率を重視したいという姿勢が見えます。
志望校はどうやって決めるのか?
一般入試により受験する生徒は、中学3年の1月に志望校を決定して願書を提出します。
もちろん行きたい学校に提出することを基本としたいところですが、受かる可能性の高い学校を選びたいですよね。
通知表の成績はこの頃にはわかります。では自分の学力点は何で図るのでしょうか?
学力テストABCについて
中学校の先生方は、3年生の9、10、11月に実施する学力テストABC(一般財団法人北海道教育文化協会)の成績を相関表の学力点に当てはめ、志望校決定の材料にします。
学力テストABCの結果は、生徒の通う中学校内の成績しか反映されないので、受験生全体の中での自分の成績の位置は捉え難いです。
子どもたちの話を聞いていると、学力テストABCは入学試験とは問題の質が異なる傾向にあるようです。
経験して思うことは、中学校で習ったこと全般をどれくらい子どもが理解しているか把握できるというくらいの扱いになるのかなぁ…といったところです。
北海道学力コンクールについて
北海道の子どもたちの間では“道コン”として知られており、小学生の頃から受ける子どももいます。中学3年生の北海道学力コンクール(株式会社進学舎北海道学力コンクール事務局)の受験率は、北海道全体では5割弱、札幌市では約6割だそうです。
道コンに参加している塾の先生方は、この北海道学力コンクールの成績を基に志望校を話し合う際の材料にします。
志望校ごとに道コンSSという偏差値を横軸に用いて相関表に表すため、志望校内での自分の位置を把握しやすいです。また、過去のデータから入試合格者の平均道コンSSを表示しているため、合否判定もわかりやすく示されます。
塾に行っていなくても、道コンは受けることができるので、道コンだけは合否判定の目安のために受けるという受験生もいるようです。
まとめ
北海道の公立高校受験には、以下の特徴があります。
- 一般受験枠のうち約70%は、入学試験当日の学力検査の成績(学力点500点満点)と個人調査表(学習点315点満点)の総合成績から合否が決められる。
- 学習点は、中学校3年間、9教科の通知表の合計から計算される。副教科の配点も主要教科と変わらない。
通知表の成績で受けられる学校が決まると言われるのは、こうした特徴のためです。ですが、学力点ももちろん求められていますので、合格にはどちらもバランスよく成績を取る必要があるということです。
ただ、学力点の配点が大きくなったことと、目指す高校によっては学力点のみで合格を決める枠もあったりするので、一概に通知表の成績で行きたい高校を諦めなければならないということでもなさそうです。
通知表が悪いと受験は厳しくなってしまうのか?と最初戸惑いましたが…
道コンの結果を見る機会が増えると、学力の高い生徒は通知表の成績も良い、ということがわかってきました。
1年生の時からの日々の積み重ねは、本当に大事ですね。
受験勉強にも便利ですよ↓
コメント
「計算されるる。」
になってます。
ご指摘ありがとうございます。